論理回路を簡略化すると、信頼性の向上・小型化・経済性などの効果があります。
ご利益があるのは、実際に動作する回路を製造する場合で、特に修理困難な場所で動作する装置とか、大量生産して販売する装置の場合です。
ガッコの授業で回路を組んでいる場合には、単位を落とすリスクが減るというご利益があるかも・・・
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たとえば、「NAND×4ヶでEXORと等価な回路・・」のページに記載したEXORの等価回路を、汎用ロジックICで製造する場合について考えます。(汎用ロジックICについては、「全加算回路って」のページの下のほうを参照のこと)
下記のように、回路の作り方によって使用するICの数やピンの数が変わります。
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EXORゲートを使用する場合、74HC86っていう14ピンのICを1ヶ使用します。74HC86には4ゲートのEXOR回路が入ってますので、1ヶのICの1/4を使用することになり、14ピンの端子のうち5ピン(入力×2ピン、出力×1ピン、電源×2ピン)を使用することになります。なお、余った3ゲートは、他の回路に使用することも可能です。
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EXORの等価回路をNANDゲート×4ヶで構成する場合、74HC00っていう14ピンのICを1ヶ使用します。74HC00には4ゲートのNAND回路が入ってますので、1ヶのICを全部を使うことになり、端子も14ピン全部を使用することになります。
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EXORの等価回路をNANDゲート×6ヶで構成する場合、74HC00を2ヶ使用し、NAND回路を6ゲート使用して2ゲート余ります。使用する端子は、22ピンになります。
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EXORの等価回路をANDゲート×2ヶ+ORゲート×1ヶ+インバータ×2ヶで構成する場合、74HC08、74HC32、74HC04っていうICを各1ヶ、合計3ヶのICを使用し、使用する端子は、19ピンになります。 |
信頼性の向上って言う意味では、ICの数と使用する端子数が効きます。
ICは1ヶあたりの不良率/故障率がありますから、使用するICの数が少ないほど、信頼性は高まります。
使用する端子は基板に半田付けすることになりますが、半田付けも1ヶ所あたりの不良率/故障率がありますから、使用する端子数が少ないほど、信頼性は高まります。
もし信頼性についてより深く知りたければ、「MTBF」っていうキーワードを調べてみてください。参考になりますので。
小型化って言う意味では、効いてくるのは主にICの数ですよね。
経済性って言う意味では、汎用ロジックを使ってるウチは、ICの数にほぼ比例するでしょう。ま、汎用ロジックでも、型番によって若干値段は違いますが・・・
なお、上記は汎用ロジックICを使用して論理回路を具現化する場合です。論理回路を具現化する手法は他にもありますので(「論理回路はどんなんがある?」を参照のこと)、その手法によって、信頼性や小型化、経済性への効き方が違ってきます。
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さて、論理回路を簡略化するご利益って、以上のような信頼性・小型化・経済性の面だけでしょうか? いえいえ、もっと大きなご利益があります。 それは「設計品質の向上」です。
論理回路は、簡単に組める回路であれば、簡単に組むべきです。これはたぶん、論理回路以外でも、ソフトウェアでも機械設計でも同じだと思います。
簡単に済むものを複雑にしてしまうと、それだけバグを作りこんでしまう確率とか、設計者が意図しない動作を行ってしまう確率が高まります。
バグなど含んだ製品を世に出してしまい、一度製造した製品を修理するとか、出荷した製品を回収するとか、そういう状況になってしまうと、膨大なコストが発生します。
だから、論理回路を設計する場合には、実現すべき機能をしっかり分析し、その機能の実現に必要なゲートを十分に使って、設計せねばなりません。不要なゲートがあってはイケマセン。必要であるはずのゲートが不足しててもイケマセン。つまり必要十分条件を満たす設計でなければなりません。
具体的に言えば、0から999までカウントするカウンタの場合、2進カウンタで構成するんなら10個のFlipFlopが在るのが必要十分条件です。10桁の2進数で1023までカウントできますから。FlipFlopが9個しか無ければ511までしか数えられないので、絶対どっか間違ってます。逆にFlipFlopが11個あれば、、、なんか余計な状態が存在するコトになり、設計者が意図して設計した状態でない限りバグの原因になります。
同じ999までのカウンタでも、10進カウンタを3個組み合わせて構成する場合には、FlipFlop12個が必要十分条件です。
だから必要十分条件ってのは、設計思想によっても変わります。
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論理回路を使用してても使用してなくても、何らかの製品を製造する会社は、必ず品質保証っていう問題に直面します。
数多くの出荷台数を誇る会社や、歴史の長い会社であるほど、製品の品質をしっかり確保している場合が多いものです。それは、修理や回収って話になったら、エライ目に遭う・・場合によっては会社存亡の危機に立たされるコトを知っているからです。逆に、品質重視のあまり、重厚長大な製品を作って失敗する場合もあります。
一方、品質を確保することをハナから断念している会社も、世の中には存在します。
極端な話、イッキに大量に作って短期間で売りさばいて、クレームが起こる頃には行方不明になってしまうよな会社とか、海外の小さな会社に適当な製品を作らせて輸入して売りさばいて、クレームが起こったら製造業者が判らないとか言って逃げる方法とか、いろいろあります。
消費者の立場では、何が良い製品なのかを見極める賢さが必要です。
後者のような瀬品に騙されて、「安物買いのゼニ失い」ってな古いコトワザのようにならないよう、ご注意くださいませ。
設計者の立場では、何が良い製品なのかを分析する賢さが必要です。
設計する者としてのプライドにかけて、後者のような製品を作らないようにしてくださいませ。
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